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2008年夏 「旅行記」 |
01 誰もいない成田 |
毎月のように燃油サーチャージが高騰していくせいだろうか、今年の出国時、成田空港は驚くほど静かだった。 チェックインカウンターは閑散としており、カウンター内の職員たちも手持ち無沙汰だ。 ターミナル内の商店も閑古鳥が鳴いており、シャッター通りと呼ばれている商店街を歩いているかのようだ。 もちろん出国も空いており、いくつかある金属チェックのゲートでは、 「こちらへどうぞ〜!」 「こちらも空いてますよ!」 と、まるで客引きでもしているかのように、何ヶ所ものゲート係員から声が掛かった。 手荷物チェックもすんなりと終え、出国審査場に着いた。 こちらも閑散としている。 広いフロアーには誰もおらず、その先の出国審査のカウンターにも誰もいない。 へっ!? 客どころか、出入国管理官もいないではないか! どうしていいものかしばらく戸惑っていると、遠くから女性係官が走ってやってきた。 「あ〜 すみません! どうぞこちらへ〜!」 こんなガラガラ空きの成田空港なんて、初めての経験だ。 ちなみに、行きの飛行機は満席だったものの、帰りの飛行機は閑散としており、ほとんどの乗客が一人で座席を2〜3つ使い、ゆったりと空の旅を楽しんだ。 プチ・ファーストクラスだ〜♪ |
02 持ち込み禁止品 |
機内にて… 「指にささくれができちゃったから、ハワイに着いたら爪切りで切らなきゃ…」 「私の爪切り貸そうか?」 「えっ!? なんで飛行機で爪切り持ってるの?」 「裁縫道具のカッターも持ってるよ〜」 預け荷物に入れ替え忘れた妻は、機内に持ち込み禁止品のカッターやハサミ、爪切りを持ち込んでいた… 「見つかったらマズイからここで出すな!」 手荷物検査の厳しいアメリカ便でも、こんな大きな見落としがあったのか… |
03 間違えた予約確認書 |
今回の我が家のハワイ旅行は、大手旅行会社のパッケージツアーを利用した。 往復の飛行機とホテル、そしてレンタカーをパックにしたものだ。 空港からレンタカーを借りて最終日に空港で返すため、空港−ホテル間の送迎などは一切ない。 ホノルル空港の旅行会社カウンターに立ち寄ると、 「アロハ〜! はい、お疲れさまでした。 ぽから様ですね… では、この確認書を持ってご自身でレンタカーを借りて下さい。レンタカーは送迎バスが巡回していますので、それに乗って事務所まで行って下さい。では良い旅を〜!」 と、事務的ではあるが簡潔に指示がされた。 オプショナルツアーなどの宣伝物とともにレンタカーの予約確認書が手渡され、レンタカー会社のシャトルバスに乗って事務所へ向かう。 アロハを着た体格の良いおばちゃまたちのいる事務所のカウンターに予約確認書を差し出す。 すると、 「メンキョショ、and クレジットカード」 と片言の日本語で言われ、これらも差し出す。 タカタカタカ〜 とパソコンに何かを打ち込んでいる手がピタリと止まった。 そして体格の良いおばちゃまはこちらをギロリと睨み、 「Are You ケイコ コイデ?」 「はぁ??? I am 篤 ぽから… コイデケイコって誰だ???」 「Oh! Here is a wrong confirmation letter… ☆▲∞£#☆○§◇∋◆∠…」 どうやら予約確認書≠ェ違っているようだ。 体格の良いおばちゃまから返された確認書の氏名欄には 『Keiko Koide』 と記されていた。 「ありゃ〜 さっきの旅行会社のカウンターで間違えたんだ…」 体格の良いおばちゃまとの間に、沈黙の時間がしばらく流れた。 「…どうしましょ?」 体格の良いおばちゃまにすがりつくような目で見て、そう言った。 すると、「仕方ないわね…」 とか何とか言いながら、あちらこちらへ電話をかけてくれた。 しばらくベンチに座って待たされたが、 「Mr. ぽから〜!」 と名前が呼ばれた。 「ノープロブレムだった?」 と日本語で聞いてみると、 「There is a little problem!」 (ちょっと問題ありよ!) と言われたが、手続きは無事に終了して車を借りることができた。 旅行会社さん、予約確認書はしっかりと名前を確認して下さいね! 「じゃあ、そのコイデケイコさんもレンタカー会社のカウンターでもめるのかしら?」 おお、そだよな〜 日本からの便は同じような時間に到着だもんな… まぁ、旅行会社のミスだし、こっちの知ったことではない。 |
04 明日まで… |
この時期のハワイは夏のクリアランスセールの真っ最中で、ショッピングセンターの各店には
<○○%OFF> の張り紙が並ぶ。 初日に訪れたブランドショップも同様だった。 店内に入ると店の一角に日本人観光客の人だかりができており、何かと覗いて見ると70%OFF≠フ大きな文字。 さらに70%を引いた金額から25%OFFがされるとのことだ。 「じゃあ、95%OFFってことね。 すっご〜い! タダみたいな値段ね〜」 妻よ、それは違う!!! 「いや、95%引きにはならないぞ。 70%を引いた金額に25%を掛けるのだから、元の値段の30%の 0.75掛けで、実質的には…」 「ん… なんだかよく分からないけど、タダみたいな値段には変わりないわよね〜」 「う、うん… まっ、そんなもんだな…」 と言うが早いか、すでに我が妻は人だかりの中へと消えて行った。 しばらくして、手に一杯のバッグや小物を抱え、満面の笑みを浮かべた妻が戻ってきた。 「このセールはいつまでやっているんですか?」 レジでショップのおばちゃんに訊いた。 「えっと…・・・・・・ ん〜 明日までよ」 少しの間があって、そう答えが返ってきた。 「ラッキーだったわね〜♪ でも、もっと買っておけば良かったかな…」 2日後、 「セールは昨日で終わっちゃったけど、買い忘れがあったからあの店にもう一度行きた〜い!」 と妻に言われ、同じ店に出向いた。 セールが終了して店も空いているかと思いきや、やはり店の一角には人だかりが… <70%OFF、さらに25%OFF> 終わったはずのセールをまだやっていた… で、またまた小物を大量に買った妻。 念のためレジでまた訊いてみた。 「このセールはいつまでやっているんですか?」 「えっと…・・・・・・ ん〜 明日までよ」 前回と同様に、少しの間があって同じ答えが返ってきた。 結局、セールはかなり長い期間おこなわれているようだ。 いつまでも <閉店セール> の張り紙を掲げている店が日本にもあるが、期間限定を強調して客の購買意欲を煽り立てるこの手口に、我が妻はまんまと乗せられてしまった。 「でもいいじゃん、安いんだから〜♪」 まぁ、そうだね… |
05 ド派手にコケた! |
日本人観光客はまだほとんど訪れない 「マノア渓谷」 をハイキングすることにした。 高層ビルのそびえるホノルルから、車でわずか15分ほどの場所にその渓谷はある。 ホテルを出発した車窓の景色は、ビル群から閑静な住宅地に変わり、やがて突如として緑多き山の入口へとなる。 このあまりのギャップには驚きものだ。 ホテルの部屋からもこのマノア一帯は見えるが、いつも雨雲に覆われている印象が強い。 海から急激に山の斜面が広がるため、雨が非常に降りやすく、湿度が高くて熱帯雨林のような森林が形成されている。 駐車場に車を停め、ハイキングの開始。 目指すはトレイルの終点にある落差50メートルの 「マノア滝」 だ。 鬱蒼と生い茂るジャングルには鮮やかな野鳥や蝶が飛び交い、渓流の流れる音をBGMに楽しいハイキングになりそうだ。 と、思ったのも束の間… 山道は相当にぬかるんでおり、急斜面も多くて足元には細心の注意を払う必要があった。 それでも登りはまだ良かった。 滝を眺めた後の帰り道、つまり下りがかなり滑って危険な状態だった。 妻が転ばないように、自分が先頭に立って進む。 「よしここOK! まずは右足をこの木の根っこ。そうそう。次に左足をこの石の上に…」 急斜面では一歩一歩を指図しながら妻を安全に進ませる。 「さすがは頼りになる夫。 この人と結婚して良かったわ〜」 っと妻も惚れ直したとこだろう。 ムフフフ… と、次の瞬間! ドワ〜〜ァ!!! 自分がド派手にコケた! 後ろの妻に振り返った瞬間、足元を滑らせ、両ヒザと両手を地面に思いっ切りついてしまったのだ。 ちょうど、小島よしおの 「ヘタこいた〜」 の格好だ。 「オ〜! アーユーOK!?」 あまりのド派手なコケ方に、地元のハイカーたちから心配の声が上がった。 「う…う… ノープロブレム……」 ヘタこいた<Xタイルのまま、そう答えるのがやっとだった。 最愛の夫の一大事! 妻は真っ青な顔をして心配しているに違いない、そう思って我が妻を見上げると、 大笑いしていた… しかも、第一声が 「きれいなコケ方だったね〜 マンガみたい〜」 (^o^) って、返す言葉がない… まずは心配しろよ! 心配を! 結局、足首を捻挫し、ヒザからは出血、体はドロだらけ… 薬局で湿布を買ってホテルに戻った。 「コケた時の写真を撮っておけば良かったわ。そうしたらホームページに載せられたのにね〜」 って、そこまで言うか!? 私は自分を犠牲にしてまで君を守ったんだぞ! でも旅ネタ≠ェできてオイシイと少し思う自分であった… (^^; |
06 無限階段 |
今回のハワイでは、もうひとつの場所でハイキングをした。 そこは 「ココヘッド」 と呼ばれるクレータの山で、標高370メートルの山頂まで真っ直ぐに線路跡が延びている。 かつてのケーブルカーの跡で、その線路跡をひたすら山頂を目指して登っていくのだ。 まるで天国につながっているかのように空へ続く階段。 雑誌の写真でそれを見たときには、「ここで写真を撮りたい!」 と強く思い、捻挫をしてびっこを引きながらではあったが、早朝にホノルルを出発した。 ホノルル郊外の閑静な住宅地の中にその山はあり、野球場やテニスコート、射撃場のある大きな公園に車を駐車して登山道に向かった。 背の高い草が生い茂るケモノ道のような所を進んでいくと、突如としてその無限階段が姿を現す。 ただひたすら真っ直ぐに上空へ延びていく線路。 見上げると中腹あたりから傾斜がきつくなり、下から見ているとまるで壁をよじ登るかのようである。 すでに地元の人々が数人登っているのが米粒のように見えた。 「捻挫もしていることだし、山頂までとは言わず、行けるところまで行ってみよ〜」 と軽い気持ちでスタートした我々。 最初のうちはおしゃべりをしながらお気楽に線路を歩く。 しかし、傾斜は徐々にきつくなってくるので、そんな気楽なハイキングもすぐに終わり、過酷なトレーニングへと変わっていった。 もはやおしゃべりなどする余裕はない。 一歩ずつ体を階段に乗せていく感じだ。 さらに、朝日が山の向こうから顔を出した。 すると日陰の無いこの階段には容赦なく太陽が降り注ぎ、暑さとの戦いも強いられるのであった。 何度も休憩をしては 「もう限界」 と思うのだが、妻が数段先を進んでいるので、夫の威厳を保つために自ら 「ギブアップ」 とは言えず、あと10段、あと10段…と心に刻んで登るのであった。 そんな亀の歩みではあったが、なんとか中間地点まで辿り着いた。 しかし、中間地点には最大の難所があった。 そこは、線路が大きな谷を越える場所で、幅の広い枕木の下はガケ… 足を踏み外したら捻挫≠ヌころでは済まない高さだ。 しかも線路は老朽化しているので、いくつかの枕木は押せば簡単に動いてしまうのだった。 登り慣れている地元の人でさえ、多くは四つん這いになってこの難所を越えている。 ここまで元気に登ってきた我が妻も、さすがにこの谷越えは怖いようで、 「私ダメ… ここで引き返しましょうよ…」 とビビっている。 「え〜、ここまで来たんだから、頑張って越えようよ〜」 と妻を励ましてはみたが、本音は、 「ラッキ〜♪ そうそう引き返しましょ〜♪」 である。 残念ながらここで引き返し〜♪ と二人の決意が固まったとき、斜め前方の草の中から子どもと女性の声がした。 道 (線路) ではないところから我々の前にヒョッコリと顔を出した彼女たちは、 「セイフティー・ルート!」 と言って、草むらの中を指差した。 谷越えを迂回する道がどうやらあるようだ。 「脇道があるみたい〜♪」 俄然に元気を取り戻した我が妻。 「う、うん… じゃあ、そのルートを行ってみようか…」 さらに疲れが出てきた夫… であった。 谷越えの先はさらに傾斜がきつくなり、ほぼ四つん這いになって登る。 登り始めてから約1時間で山頂に到着〜☆ 最後の1段を登りきると、先に到着していた地元の人々が拍手をしてくれた。 山頂には心地良い風が流れ、振り返ると延々登ってきた直線階段の先に、ハワイの青い海がキラキラと光っていた。 この苦労を知った者だけが味わえる爽快なひとときだ。 「びっこを引きながらのあなたが、ここまで登って来れるとは思わなかったわぁ〜」 妻も夫の偉大さを見直したようだ。 さて、あとは今来たこの階段を下るだけ。 ところが、急斜面の下りは想像以上に怖かった… |
07 埼玉に住んでるアメリカ人 |
泊まっているコンドミニアムのランドリーで、ひとりのアメリカ人男性と出会った。 床にソックスが落ちていて、 「誰のだろ?」 と拾い上げたときに、 「マイ ワイフ ノ ソックス デ〜ス」 と言われたのがきっかけだ。 「ニホン カラ キマシタカ?」 片言の日本語が話せる人だった。 「日本語お上手ですね」 「ハイ ワイフ ガ ニホンジン デ〜ス。 ワタシモ サイタマ ノ カスカベ ニ スンデマス」 「え! 埼玉に住んでいるんですか!?」 「ハイ バカンス デ ハワイ キマシタ」 「私たちも埼玉に住んでいるんですよ」 「サイタマ ノ ドコ デスカ?」 「三郷です」 「ミサト? オオミヤ ニ チカイ デスカ?」 「いや、武蔵野線の… 武蔵野線ってわかる?」 「ハイ、ディズニーランド ニ イク トレイン デスネ」 「そうそう! その線に三郷ってあるんですよ」 「OH! ディズニーランド ノ チカク ナンデスネ〜」 「いや〜 ちょっと違うんだけど…」 まぁ、春日部から見たらディズニーランドは近いかもな… |
08 ナホオラ・スパ |
毎回恒例となったハワイのマッサージ・ロミロミに行った。 今回は雑誌でも必ずと言っていいほど紹介されている、ハイアット・リージェンシーにある 「ナホオラ・スパ」 に行った。 専用エレベータに乗って5階で降りるとそこには受付があり、あらかじめツアーデスクで予約をしておいた確認書を提示する。 <何かあっても訴えたりしません> のような事が書いてある、訴訟大国アメリカらしい誓約書にサインをし、ここで妻と別れる。 ロッカールームでバスローブに着替え、ロビーでしばらくくつろいでいると、 「ハ〜イ! ナイス トゥ ミート ユー!」 と、屈強そうな白人青年がやってきた。 彼が私を担当してくれるマッサージ師だ。 マッサージ師の男女別はリクエストできるのだが、 「ご主人は女性のマッサージ師さんがいいわよね〜?」 とツアーデスクの担当者から訊かれたが、 「そりゃ〜 若くて細身の娘がいいです〜☆」 などとは妻がいる手前とても言えず、 「いや… 別にどちらでもいいですよ…」 と言った結果がこうなった。 でも、男性ならではの力の入れ方は疲れた体に心地良く、すぐに夢の世界に入ってしまった。 最初は頭の方から揉んでいき、次に首筋、背中… と揉み解していく。 静かな音楽が流れる室内はアロマの香りに包まれ、まさに至福のひとときである。 ん〜 極楽、極楽〜 が… 「う”っ! んぐぐぐぅ! いっ〜〜たぁ!!!」 捻挫した足首を思いっ切りグリグリされた! 一気に現実の世界に引き戻された。 捻挫していることを伝えるのをすっかり忘れていたのだ。 そのまま予定の60分が経ち、後味の悪いままにロミロミは終了した。 エステコースをやった我が妻は、 「エステティシャンが若くてと〜ってもカワイイ娘だったわよ〜」 と報告してくれた。 なんだよ、そっちのほうが良かったなぁ… でも、結果はオーライだったようで、このマッサージの後は捻挫した足の痛みが少し和らいだ。 |
(完) |
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