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2007年夏 「旅行記」

 01   ペリエ
 今年のハワイ旅行は全日空を利用した。
 これまでは米系航空会社ばかりを利用していたが、前々回のJAL以来、日系航空会社の快適さがハワイ旅行の条件として譲れないものになってしまった。
 何といってもきめ細やかなサービスが気持ち良い。
 飲み物のコップが空になると、すぐにキャビンアテンダントがやって来て、
 「おかわりをお持ちしましょうか?」
と声を掛けてくれる。
 スナック類も食べ放題だ。
 座席に設置された個々のモニターで、好きな映画や番組を好きな時に観られるのも良い。
 そして妻は、
 「安心してミルクが注文できるわね〜♪」 (2003年旅行記参照) と喜んでの搭乗だ。
 機体が水平飛行になると、すぐに飲み物サービスのワゴンがやってきた。
 「ミルク、下さ〜い♪」
 思い切り日本語で注文する妻。
 すると、キャビンアテンダントは…
 「はい、“ペリエ” ですね。少々お待ち下さい」
 「いや〜、牛乳です!牛乳!」
 「あ、失礼しました」
 ミルクとペリエ、どう聞き間違えたのだろうか???
 米系でも日系でも、一発で牛乳を注文することは至難の業だ…


02   小さい飛行機の利点
 成田−ホノルル便と言えば “ドル箱路線” なので、ジャンボジェット機が就航しているものと思っていた。
 しかし、今回の機材はメインキャビンの座席配列が <2−3−2> のボーイング767型機。
 ジャンボジェット機だと <3−4−3> の配列となるので、767型機はジャンボジェット機に比べて座席数が70席以上も少ない。
 ジャンボジェット機に慣れていると、かなりコンパクトな感じがする。
 しかし、キャビンアテンダントの数はそれほど少なくなっているとは感じられず、乗客が少なくなった分、より細かなサービスが受けられたように思えた。
 さらに、トイレの順番待ちもほとんどない。
 「小さい飛行機の方が快適だね」
 と妻に話しかけると、
 「そうね〜。小さい飛行機の方が、胴体着陸の時の成功率が高そうだもんね♪」
 って…
 まぁ、つい数ヶ月前に全日空機が胴体着陸した事故はあったけど…



03   テロリスト疑惑!?
 アメリカ独立記念日前で夏休みの前でもあったせいか、今年のホノルルは全体に空いていた。
 入国審査場もガラ〜ンとしており、飛行機から降りてきた我々に対し、多くのブースから入国審査官が、まるで“客引き”のように手招きをしていた。
 手招きされるままに、我々は満面の笑みを浮かべたフレンドリーな女性審査官のブースに行った。
 「ハロー!」
 「あ、はろ〜ぉ!」
 指紋の照合と顔写真の撮影が行なわれ、続いてパスポートの照合と続く。
 その間に、フレンドリーだが事務的に「入国の目的」や「滞在期間」などが質問された。
 そこまでは、いつもどおりの淡々とした入国審査だったが…
 パスポートのスタンプ欄をパラパラとめくった審査官は、あるページを凝視したまま固まった。
 そして、他のページもじっくりとチェックを始めた。
 沈黙状態の重い空気が流れた。
 やがて、女性審査官が別の男性審査官を呼び、その彼から
 「少々質問しますね」
 と、流暢な日本語が返ってきた。
 男性審査官は日本語が話せた。
 「このビザは何ですか?」
 「へっ!? パキスタンですけど…」
 「何の目的で行きましたか?」
 「観光ですが…」
 「もっと具体的に」
 「え? 具体的にって言われても… 名所見物したり、ハイキングしたり、写真撮ったり…」
 「個人旅行ですか?」
 「いや、団体旅行です」
 「じゃあ、このバングラデシュは?」
 「それも観光… あ、名所見物したり、ハイキングしたり、写真撮ったり…」
 「じゃあ、このモロッコは?」
 「それも観光で、名所見物したり、ハイキングしたり、写真撮ったり…」
 「このスタンプはドコですか?」
 「これは…… 香港ですね。それも観光で、名所見物したり…」
 「OK! 香港のことは結構です」
 イスラム圏の国について詳しく質問をしてきた。
 「次に、このネパールは?」
 「それも観光で… (以下省略)」
 「このカンボジアは?」
 「それも観光で… あれ? カンボジアは敬虔な仏教徒の国ですが…」
 と、押された入国スタンプのひとつひとつを根掘り葉掘りしつこく質問してきた。
 ――1カ国づつ旅の思い出話しでもしてやろうか・・・
 などとイライラしながらこちらも答える。
 ほとんどすべてのスタンプについて質問された後 (…と言っても答えはすべて同じだが…)、 「あなたの職業は何か?」とか「勤続何年になるのか?」などの質問が繰り返された。
 もはや“質問”ではなく“尋問”だ。
 そして、最後にこんな質問をされた。
 「あなたはパキスタンを始めとし、多くの要注意国に行かれています。テロリストですか?」
 ―― 何じゃ、その質問は! テロリストがそこで 「はい」 と言うわけないだろ!
 当然ながら「ノー」と答えると、女性審査官はこちらをギロッとにらみ、入国スタンプを力一杯押した。
 続いて妻の入国審査を行なったのだが、妻のパスポートはほとんど見ることなく、入国スタンプが押された。
 「私のシンガポールや台湾の“旅の思い出”は訊いてくれなかったわね…」

 入国審査で散々時間がかかったので、預けた荷物はすでにベルトコンベアから降ろされ、ポツンとフロアーに置き去りにされていた。
 その荷物を持って税関へ。
 ブースの手前にいた係員に税関申告カードを提示すると、「あちらのブースへ行け」と行くべきブースの番号が指示された。
 税関申告カードには、先ほどの入国審査官が赤ペンで『こいつはパキスタンへ行っている』『その他の敵対国へも行っている』などと記入したのだ。
 そこで、通常のラインとは別のブースへ行けと指示されたのだ。
 税関でも先ほどとまったく同じ質問が繰り返され、そのたびにこちらも、
 「名所見物したり、ハイキングしたり、写真撮ったり…」
 と答えた。
 しかし、税関では荷物を開けられることはなく、ひととおりの質問だけで終了した。
 “ご禁制” のレトルトカレーやカップ麺を持っていたにも関わらず、それらについては何ひとつ訊かれることはなかった。
 2年前の入国では、肉の持ち込みチェックがかなり厳しかったのに…
 妻曰く、
 「2年前は <お肉の取り締まりキャンペーン> で、今年は <テロリスト取り締まりキャンペーン> なのね」
 「そ、そ〜かもね…」 (^o^)
 「って、そんなことより、これからはそんな怪しい国に行ってはいけません!!!」 (`o´)
 と妻に怒られた… 
 「すんましぇん…」 m(_ _)m
 ―― でも、<イスラムの国=怪しい国> ではないんだけど…


04   一番人気
 映画にもなった超有名ブランド・○ラダの店内にてバッグを買おうとしている妻に、黒いスーツをビシッと来た店員さんが一生懸命に商品の説明をしていた。
 「こちらのバッグは今年の最新の形で、いま一番人気なんですよ」
 「かわいい〜☆ でも、肩から提げられるのが欲しいんですけど…」
 「ならばこちらは? これは一番人気ですよ」
 「あ〜、まぁまぁいいかな〜☆」
 「こちらのシワシワしたタイプもいいですよ。こちらも一番人気です」
 「あ〜、これもいいな〜☆」
 「やや小さめならこちらは?」
 と、棚の引き出しから別のバッグを数種類取り出し、
 「こちらも今、一番人気なんですよ〜」
 ―― いったい “一番人気” がいくつあるんじゃ!?


05   まとめ買い
◇ワイキキのDFS (デューティーフリーショップ) にて

 妻がオーデコロンを買おうとしていた。
 すると店員が
 「こちらの商品は、2個お買上げいいただくとお得ですよ」
 「2個でいくらですか?」
 「はい、30ドル (約3,750円) になります」
 「へっ!?」
 驚くのも無理はない。
 なんせ、このオーデコロンは1個27ドル (約3,375円) なのだ。
 「1個27ドルの物が、2個で30ドルなの!? ホント?」
 「そうよ」
 と店員はいいながら、バーコードの読取り機を商品に当てた。
 ピッ!
 「ほらね〜」
 確かに2個で30ドルだ。
 「ね〜ね〜、それって、値段設定がおかしくない?」
 思わずそう言ってしまうと、
 「そうなのよ、うちではこういうことがよくあるのよ〜」
 と笑いながら答えた。
 これって、1個目が高い値段設定なのか、それとも2個目がタダ同然なのか…?


◇アウトレット店にて

 お土産用の化粧ポーチを買いに行った。
 ここ数年でワイキキやDFSにいくつか出店させた、日本人にも人気のブランド店だ。 
 店内はやはり日本人で賑わっており、皆、お土産用に数多くの商品を手にとっていた。
 そんなお客さんの中に混ざって、我が夫婦もお土産選びで数多くの商品をカゴに入れていた。
 すると店員が、
 「たくさんお買いになるなら、こちらの6個セットがよろしいんじゃないでしょうか?」
 と、ポーチが6個にセットされた商品を案内してくれた。
 「デザインはAパターンとBパターンの2種類があり、各120ドルです」
 「わ〜、これお得じゃない!」
 と妻は6個セットを手に取る。
 しかし… 
 「ちょっと待った!」
 1個20ドルの商品が、6個セットで120ドル…
 120ドル ÷ 6個 = 20ドル!
 あれ? それって、ぜんぜん安くなってないじゃん!
 「ありゃ! 危うく騙されるところだったわ〜」
 と慌てて商品を棚に戻す妻。
 店員は 「セットが安い」 とは一言も言っていないので、勝手に安いと思い込んでいたこちらが悪い。
 6個セットはデザインを選べないだけ、逆に損をする。
 「きっと、売れないデザインだけを寄せ集めてセットにしてるのよ〜」
 ん〜、妻のその見解は正しいかも…
 


06   2畳半
 スパ&エステに行った。
 今回はアラモアナショッピングセンターに近い、「笑福亭鶴瓶がここに部屋を持っているんですよ」と運転手が教えてくれたコンドミニアムの1Fにある店だ。
 妻は <フェイシャルエステ・コース>、自分はハワイのマッサージである <ロミロミ・コース> にした。
 ロミロミはアロマオイルを塗りながら1時間かけて、頭の先から指の先までもみほぐしていく、まさに天国気分のコースだ。
 途中で温められた石を背中の上に乗せ、ポカポカと全身を温めながらおこなうマッサージに、ついウトウトとなってしまった。

 1時間なんぞはあっと言う間に経ってしまい、極楽気分のままロビーの籐の椅子に座って妻を待つ。
 他にお客さんがいなく、店内には心地良いハワイアンの調べが流れていた。
 しばらくすると、ブランドものの紙袋をたくさん抱えた日本人がやってきた。
 今どきの女の子2人組だ。
 店の扉は外側からは 『PULL (引く) 』 なのに、一生懸命に扉を押して「開かない!」と叫んでいる。
 2人は店員に案内され、自分が座っているすぐ隣の椅子に腰掛けた。
 「じゃあ、まずこの質問事項にお答え下さい」
 と紙を渡された。
 これはエステやマッサージを受ける際の健康状態の質問で、自分たちもこの用紙を書かされた。
 これは、 「心臓病はありますか?」 とか 「高血圧ですか?」 「アレルギーはありますか?」 などの質問に答えていくものだ。
 2人組もキャーキャー騒ぎながら質問に答えていった。
 ―― こちらは極楽気分で気持ちよくボケ〜ッとしているのに、そんなことで騒ぐな!
 この質問事項はひとつでも『Yes』があると、原則としてエステやマッサージが受けられないのだそうだ。
 ところがこの2人組のうちの一人が、とある質問に該当してしまった。
 それは、
 「閉所恐怖症ですか?」
 という質問だ。
 記入された用紙を店員さんは見ながら、
 「閉所恐怖症ですか…」
 と困惑した顔で尋ねた。
 すると彼女は、
 「はい、2畳半以下の狭い部屋がダメなんです!」
 と元気にのたまった。
 「はい? 2畳半以下ですか!? うちにはそんな狭い部屋はありませんから大丈夫です!」
 そりゃそうだろ。日本円で1万円以上もするエステで、そんなに窮屈な部屋はあるわけない。
 それにしても、 “2畳半” とはかなりリアルな数字だな…


07   パニックボタンでパニック
 現地でのレンタカーはトヨタ車だった。
 ハンドルが左右違うのは大きいが、計器類やスイッチ類はアメリカ車よりも使いやすい。
 エンジンキーには、ドアロックの施錠・開錠ができるリモコンも付いていた。
 ところが、このリモコンの背面には 『パニックボタン』 なるものがあった。
 朝6時、人もまばらでまだ静かなワイキキの路上から車に乗り込もうと、遠隔操作でドアロックを解除しようとした。
 そのとき…
 「フォ〜〜〜ン!!!」
 けたたましいクラクションが鳴り響き、ライトやウインカーが一斉に点滅を始めた。
 「わっ、わっ、なんじゃこりゃ!」
 間違えて 『パニックボタン』 を押してしまったのだ。
 早朝の静かなワイキキの町にクラクションが鳴り響く…
 パニックボタンの解除方法など知らない。
 「ええ〜い、静まれ〜」
 とばかり、エンジンをかけてみた。
 すると、車は何事もなかったように静かになった。
 (^^; ホッ

 パニックボタンなんて、我が愛車には付いてないもんな〜


08   天国の海
 「全米・きれいな海ランキング」 5年連続1位を獲得している海が、オアフにあるそうだ。
 なんじゃ、その 「きれいな海ランキング」 って疑問はさておき、そのきれいな海に行ってみることにした。
 通称 『天国の海』 と呼ばれるそのビーチは、ワイキキから車で30分ほどのラニカイ (Lanikai) という所だ。
 地図を見ると、その手前のカイルアビーチは公園となっているが、ラニカイにはビーチ・パークが見当たらなかった。
 カイルアビーチを過ぎると住宅街の狭い道となり、すぐにラニカイに到着した。
 この日は日曜日ということもあり、一方通行の道の両端には延々と車が路上駐車されていた。
 車を停めるスペースを探すのにひと苦労だ。
 空いているスペースは民家の出入口や消火栓の前であり、何周もしてやっと1台分のスペースを見つけた。
 ここから海へは民家と民家の間にある狭い道を行く。
 民家が途切れるとすぐに、眼前に白い砂、真っ青な空、コバルトブルーの海が広がった。
 「おお〜っ!」
 妻と二人で思わず感嘆の声を上げた。
 「ん〜、まさに天国の海」
 ところが、さらに進んでビーチの全景が見えると、
 そこは、
 人・人・人、そして、人…
 砂浜は長いのだが幅が狭く、そこに大勢の人が折り重なるようにゴロゴロとしていた。
 「うわっ!」
 妻と二人で思わず絶句…
 そそくさと写真だけを撮ってすぐに退散。
 ここはビーチパークではないのでシャワーが無く、砂だらけの足で車に乗り込まなくてならなかった。
 さらに、警察のパトカーが巡回しており、駐車違反の車 (=ここに停まっているすべての車) の切符をきっていた。
 駐禁をきられた車に戻って来た人たちは、一気に “天国” から “地獄” に堕とされるんだろうな…



09   ケツの下
 楽しかったハワイ旅行を終え、成田空港に到着した。
 成田空港までは自家用車で来ていたので、駐車場に電話をして車をターミナル・ビルまで持ってきてもらった。
 やがて見慣れた愛車がやって来て、運転してきたおじさんからエンジンをかけたままの車を受け取る。
 荷物をトランクに積み込み、さあ、家に向かって出発!
 …と、あれ? 車のキーが無い。
 我がヴィッツはキーレスエントリーなので、キー (電波を発するキー) が車の近くにあればエンジンがかかるのだ。
 「車の鍵が無いぞ!」
 「え〜?」
 と必死に車内を探す妻と、車外を探す自分。
 ところが、いくら探してもキーが無い。
 エンジンがかかっているのだから、この車のすぐ近くにキーがあることは確かなのだが…
 まだ近くにいた駐車場のおじさんを必死に探し出し、
 「車の鍵が無いんですけど…」
 と訊いてみた。
 すると、おじさんは一緒に車まで来てくれ、
 「あの〜、奥さまお尻の下に…」
 助手席のシートに置いてあったキーの上に妻が座ってしまい、 「無い!無い!」 と騒いでいたのだ。
 「失礼しました〜ぁ」 (^^;

 「探すときは立ち上がって探せよな! 第一、ケツの下にあって気付かないのかよ!?」
 「そんなに、ケツ、ケツ言わないでよ! こんな所に鍵を置いていくおじさんが悪いのよ!」
 険悪なムードの帰り道となった…
(完)

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